お仕事情報

  • 3/20発売
  • 集英社オレンジ文庫
    今日から「夫」と言われても~NDY企画 任侠事件簿~
  • 新釈 グリム童話 ※アンソロジーです
  • 発売中
  • コバルト文庫
    夜来香恋結店(イエライシャンこいむすびてん)
  • 集英社文庫
    ザ・藤川家族カンパニー3 漂流のうた

Imformation

  • 響野夏菜のそのひぐらし へようこそ^^
    * 当ブログは響野夏菜管理のブログです。
  • * コメントは承認制ではありません、お気軽にどうぞ~。 当方の余力その他により、本文欄でコメント返しあるいは内容に触れることもありますが、ないときもあります。あくまでも、こちらの余力いかんなので、気にしないで下さいませ。
  • * 質問もコメント欄、あるいはメールで受け付けますが、原則作品に関することのみ、そして答えられることであれば本文上で回答いたします。メールでお問い合わせいただいても、メールでのお返事は差し上げておりませんのでご了承ください。
  • * 当ブログの内容を、許可なく二次加工・利用・第三者への配布をすることはご遠慮ください。
  • * 不適当と思われるコメントは、投稿者の承諾なしに削除させていただくことがあります。 また、混乱を避けるため、コメント欄を一時的に閉鎖させていただく場合もございます。ご了承ください。

最近のコメント

無料ブログはココログ

キューピー3分クッキング

〈ローレシュ男子会〉の夜

 オーデット王城、城下町。
 とある路地にあるその居酒屋では、数人の男たちが酒を酌み交わしていた。
 ほぼ全員が人目をひくほど大柄で、鍛え上げられた身体をしている。
「そりゃ、おまえはいいさ」
 麦酒用のジョッキで蒸溜酒をあおりながら言ったのは、長髪の武人だった。褐色の髪を一つに束ねたその横顔は端正だが、いかんせん美男と呼ぶにはいかつすぎる。
「当て馬だろうとなんだろうと、初めから名を呼ばれ台詞もあった。初登場は一巻の一○七ページ。けっこうなことではないか」
「というよりも、ローリオ兄上は、格付けとしては主役、準主役に次ぐくらいの位置ですよね。いつも登場するわけではないにしろ、ストーリーを回す役どころの時もあるわけですし」
 同意したのはローレシュ家の四男フィリーだ。次兄にぐっとジョッキを突き出され、蒸溜酒を継ぎ足す。
「おまえだって、似たようなものではないかフィリー」
 次兄はなだめるような顔をしたフィリーをにらんだ。
「エルレイン姫の呪いを解く魔法使いを探す役目に抜擢されおって。たんなる背景描写かと思えば、九巻で本文登場ではないか」
「わたしの場合は、ローリオ兄上と合流したからですよ。言わば相方の力というか……」
「ピンでは不可能だったと言うのか」
「はあ、そう思います。お一人でも出番があったのはゴ……、いやルデリオ兄上です」
 長兄をうっかりあだ名で呼びそうになり、フィリーは咳払いしてごまかした。
 弟たちの愚痴が始まってからずっと、手酌で黙々と呑んでいたルデリオ――ゴーリーが半眼になった。
「おまえは、エルレイン姫に触れてカエルになったことがないから言えるのだ」
「そういえば、ルディ兄上はカエルレースに出場なさったんでしたね」
「岩のような強ガエル姿のほかに、ご尊顔も披露されたのですから、よろしいではないですか」
 ひがみっぽく横から口を出したのは、六男だ。彼は特徴的な都市警備隊の制服を、腕まくりして着ている。
「わたしなんか、警備隊長の一人だという情報のみですよ? 台詞など論外。外見描写だってありません」
「外見描写が望みなら、俺がしてやる。褐色の髪、オルフェリアによく似た春の空色の目。体格はゴーリーほどではないにしろ、かなりの大柄だ」
 心底うんざりした様子でローリオが言った。彼は酒にも食事にも、ほとんど手をつけていない。
「おまえも兄上も、こんなところでクダを巻いて、いいかげんみっともないと自覚しろ。俺たちに照明が当たったのは、わが家の姫将軍の兄弟だったからにすぎないんだ」
「さすがに、姫とのからみもあったローリオ兄上は、目線が我々とは違いますね」
「そうやって今ひがむなら、エルレインのところへ日参しておけばよかったんだ。エルレインが殿下たちに出会った時に居合わせていれば、その後も必然的に出番は増えたさ」
「そうとは限りませんわ」
 ふいに、隣の席から割り込んできた者がいた。そちらでは、数人の若い女性がテーブルを囲んでいる。
 男性を同伴せず、女性たちだけで夜に連れだって出かけるのは珍しかった。華やかな雰囲気からも、彼女たちが王宮づとめの侍女だというのが知れる。
「わたくしたち、離宮でエルレイン姫さまづきの侍女をしていた者です。ローリオさまとは面識がございますわよね」
「ああ。エルレインの側で茶を入れたり、適正距離を測る棒を持っていたりしたな」
「さようでございます。もう、本当に初めから登場しておりました」
「なのに、シリーズ終了までに、名前を呼んでもらえた回数は、ゼロ」
「それどころか、描写が省かれている場合だってありましたわ」
「あのなあ」
 眉をひそめたローリオが、頬杖をつき、酒杯をもてあそんだ。
「おまえたちや城内をうろついている侍従の描写を、場面転換のたびにしていてどうする。城なんだから、働く者がいて当然だろう。そんなのはお約束だ」
「ローリオさまはそうやって、やっぱり上から目線ですわよね」
「そうそう、上から目線ですわ」
 侍女たちがこれ見よがしにささやき合った。
「わたくしたちが言いたいのは」
 半分目の据わった侍女の一人が、音を立てて果実酒のグラスを置いた。
「わたくしたちにも名前がある! ということですわ。それを、世間のみなさまに知ってもらいたいのですっ」
「よく言った!」
 天井からつり下げた燭台が落ちるような大声で、次兄が同意した。
「その通りだ侍女どの。わたしは国境警備隊南域司令を務める、デミリオ・ローレシュである!」
 がばと立ち上がり、ジョッキを高く突き上げた。
 仰天した周囲をにらみ回す。
「名乗って何が悪い!」
「そうですわ」と後に続いた侍女が、自分もグラスを掲げた。
「わたしくは元エルレインさま付き侍女のイオニアと申します」
「フレデリカですわ」
「ディアーナです! みなさま、わたくしはディアーナですわ!」
 甲高い声で侍女たちが口々にわめいた。そのキンキン声に長兄と三兄が辟易する中、六男も名乗りを上げる。
「オーデット王国都市警備隊、第二分隊長シーリオ・ローレシュであります!」
「勝手にやってろ。俺は帰る」
「ローリオ」
 ゴーリーが弟を諫めた。これは季節に一度の〈ローレシュ男子会〉なのだ。どんなに荒れようと、途中退席は許されていない。
 ローリオはぶすっとした顔で座り直し、ふと、頭からキノコを生やしそうなほど、どんよりとした弟の一人に気づく。
「どうした、セオディ」
 ゴーリーが問うと、ローレシュ家の五男セオディリオが安堵の表情になる。
「いや、わたしにはこの場でも、一度も台詞が回ってこぬのではないのかと――」
「セオ兄上は、遠慮深すぎていかんのです。さあ、世界に向かって、ご自分の名を叫ばれるがよろしい!」
「う、うむ。わたしはセオディリオ・ローレシュと申す。国内を巡り、騎士たちを鍛える教導隊の副長を務める者である!」
「よく名乗ったセオ!」
 むやみに褒める次兄に、セオは「咆哮」という形容がふさわしい声で答える。
「はい、兄上!」
「うおおおおお、これで悔いなし!」
 感情が一気に高まった次兄が、テーブルに頭突きをした。
 触発されたセオディリオが、真正面で同じことをする。
 ローレシュ兄弟の攻撃に耐えられず、めき、と音がして分厚い天板が割れた。
 料理と酒瓶が道連れで床に落ちると、侍女たちが歓声を上げる。
「店主、酒だ。樽ごと持ってこい!」
 額も赤くもせず命じるデミリオに、店主は一も二もなく従った。
「すまぬな、店主。テーブルは弁償する」
 ゴーリーが壊れたテーブルをひょいと持ち上げ、戸口から表に放り出した。この店に据え付ける時、八人がかりだったことを店員たちは思い出して青ざめる。
「みなさま、こちらにいらっしゃいませんこと? 今夜は飲み明かしましょう!」
 イオニアがローレシュ兄弟を招いた。
 扱いに不満があった者同士、たちまち意気投合したようだった。即席の酒宴が始まり、騒ぎがどんどん大きくなる。
「脇役にも人権を!」
「そうだそうだ!」
「兄弟には、平等に出演権があるべきである!」
「侍女にもですわ。ちょっとくらい若いからって、見習いの小娘ばかりが注目されるなんて許せません」
「……子役って、そういうもんだろうが」とローリオがつぶやく。だが気炎を上げるローレシュの男たちと侍女たちは、聞く耳を持たなかった。
「我々、シリーズを支えた者たちに乾杯!」
「乾杯ですわ!」
 グラスが触れあい、勢い余って次々に割れる。それでも、酒宴は続いた。果てしなく続いた。

 翌日。
 痛む頭とはれぼったい顔を抱えたローレシュ家の兄弟たちが、こめかみに青筋を立ててにこやかに微笑む母親に、きつい罰を受けたのは言うまでもなかった……。

本日も晴天なり?

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

集英社文庫既刊

  • ザ・藤川家族カンパニー
    あなたのご遺言、代行いたします/ブラック婆さんの涙/漂流のうた

集英社オレンジ文庫既刊

  • 新釈 グリム童話
  • NDY企画 任侠事件簿
    今日から「姐」と言われても/今日から「夫」と言われても

Cobalt文庫既刊

  • 夜来香恋結店
  • 東京S黄尾探偵団 夏休みだヨ、全員集合!
    (コバルト文庫「書き下ろしアンソロジー① 龍と指輪と探偵団」に収録)
  • 薔薇の純情
    背徳の黒き貴公子
  • 鳥籠の王女と教育係シリーズ(全12冊)
    婚約者からの贈りもの/魔王の花嫁/永遠の恋人/姫将軍の求婚者/さよなら魔法使い/嵐を呼ぶ王子/恵みの環の魔王/魔法使いの選択/〈国守り〉の娘/夢で逢えたら/魔王の遺産/恵みの環の花嫁
  • 今夜きみを奪いに参上!シリーズ(4冊)
    紅(あか)の宝玉/忘れられた楽園/翼のない王/千人王の恋人
  • ダナーク魔法村はしあわせ日和シリーズ
    都から来た警察署長/ひみつの魔女集会/ドラゴンが出たぞ!/いとしのマリエラ/ただしい幻獣の飼い方
  • ガイユの書シリーズ(全4冊)
    薔薇の灰に祈りを/薔薇の灰に恋(こ)がれ/薔薇の灰は雪に/薔薇の灰は闇に
  • 東京S黄尾探偵団シリーズ(全28冊)
    少女たちは十字架を背負う/ 青の封印/ Kの処刑場/五月、拉致られる/さらば愛しき女(ひと)よ/羊たちの祭壇/竹林(ちくりん)温泉殺人事件/時計台の首縊り(くびくくり)の鐘/魔都に鳴く龍/ 君にささげる花束/ Sの葬列/俺たちは天使じゃない/ローマの厄日(やくじつ)/宝島へようこそ/シンギング・バード/奥様は魔女!?(マンガ版)/保健室とマシンガンv/ 嵐の歌を聴け/その女、凶暴につき/八月の雨/Uの烙印/もっとも危険なゲーム/バカップルがいっぱい/雨の海に眠れ/S黄尾、解散!?/ 史上最大の作戦(前編・後編)/奥様は魔女!? リターンズ
  • 振り返れば先生(ヤツ)がいるシリーズ(全2冊)
    振り返れば先生がいる/振り返れば先生がいる2ndシーズン
  • 王子様にキスを
  • 人は影のみた夢シリーズ(全4冊)
    人は影のみた夢①~④
  • 華(はな)は藤夜叉シリーズ(全2冊)
    華は藤夜叉/PURE GOLD
  • アル-ナグクルーンの刻印シリーズ(5冊)
    クィンティーザの隻翼(かたはね)/エズモーゼの左手/星は踊る/ 月を狩る森/砕けた紋章
  • この雪に願えるならば
  • 雨の音洲(あめのおとしま)秘聞シリーズ(全3冊)
    闇燈籠(やみどうろう)心中 桜の章、吹雪の章/ 朧月鬼夜(おぼろづきよ)抄
  • 月虹(げっこう)のラーナ
  • 羽硝子(ハネガラス)の森
  • 睡蓮の記憶
  • カウス=ルー大陸史・空の牙シリーズ(全17冊)
    誘いの刻(とき)/太陽のエセラ/ 祭りの灯(ひ)/嵐が姫《幽幻(ゆうげん)篇》《風雷篇》/忘我の焔/今日命(きょうめい)の螺旋/かさねの鉢植/女神の輪郭(前編・後編)/影朧(かげろう)の庭/聖女の卵/夢眩(むげん)の鏡/華烙(からく)の群れ/蘭の血脈《天青(てんじょう)篇》《地猩(ちじょう)篇》《紫浄(しじょう)篇》

ビーズログ文庫既刊

  • 少年ユヅルの優雅で怠惰な王国
  • 神抱く凪の姫シリーズ(全3冊)
    キレ神様、お目覚めにございます/耐えてください、キレ神様/誓いの刻です、キレ神様
  • 姫さま、恋愛禁止です!シリーズ(全2冊)
    花婿はお馬の王子/旦那さまと呪いのウサ耳
  • 女神の娘の恋歌(こいうた)シリーズ(全3冊)
    暁は伯爵、黄昏は魔王/光の乙女、闇の聖女/一瞬の光、永遠の輝き

幻狼ファンタジアノベルス既刊

  • 半魂香―まどろみの巫女と〈守護者〉―〈上〉〈下〉