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キューピー3分クッキング

まくらの森の魔女

 あれから気の遠くなるほどの時が過ぎた今でもまだ、わたしは振り返らずにはいられない。
 あの時、どうして自分は意地を張ってしまったのか。
 どうして、立ち止まってさしのべられた手を取ることが出来なかったのか。
 あの方たちはとても優しく、わたしに言葉を尽くしてくれた。繰りかえし、繰りかえし諭してくださった。
 思えば、わたしがほんの子どもの頃からだ。要らない子だ、駄目な子なんだと引け目を感じ続けていたわたしを、あの方は側に置いてくださろうとした。
 
 なのに、わたしはそれを拒んだ。
 魔力を得ること。
 そのことだけに固執して、たった一人の友人さえ、禁を犯させて失ってしまった。

 あの方にも、その夫となられた方にも、ひどいことばかりを言った。「魔法公と呼ばれた方に、わたしの気持ちなどわかるものか」という言葉までぶつけた。
 ある意味、かの君はわたしと同じように苦しんでおられたのに。
 魔力をもたずに、魔法使いの村に生まれたわたしと、
 魔力のためだけに生を受けたあの方との間に、どんな違いがあっただろう。

 けれども、愚かだったわたしにはそれがわからなかった。
 挙げ句、お二人を憎みすらした。
 ご自分たちは死を賭して願いを叶えたくせに、わたしにはその機会を与えないのか、と。

 あの頃、時代はすでに魔法を置き去りにしようとしていたのに。
 魔力などなくても、しあわせになれる道はいくらでもあったのに。
 わたしは――魂を売り払った。
 そう、わたしは魔力を得たのだ。「まくらの森」という、ねじけた環の中でだけ通用する、罪に濡れた力を。

 もしあの時、あの方たちの言うことを聞いていたら。
 暗い暗い森に閉じ込められ、わたしは時々そう考える。
 さしのべられた手を取り、生涯お仕えしていていたならば、きっと笑顔で暮らせたはずだ。
 小さいながらも陽の当たる、居心地のよい部屋をいただき、お子さまやお孫さまのお世話などををして。
 じめついた陽の射さない森の家で、魔鏡越しに拝見するご家族に、幾度涙を流しただろうか。
 わたしもあそこにいられたのに。お二人は受け入れてくださったのに。
 つまらない誇りが、わたしにその手を振り払わせた。
 そして、あの方たちが次の恵みの環へと旅だった後もここにいる……。
 
 いまのわたしは、ただ待っている。
 いつの日か、誰かが歪んだ魔法の環を断ち切って解き放ってくれることを。
 おそらく、環から解き放たれた後にはあがないが待っているだろう。
 ドラゴンに堕とされることも覚悟している。
 けれど、すべてを償い終えたならば、わたしはあの方に会いに行ける。
 薔薇一輪手向けることのかなわなかったお二人の眠る場所に、両手いっぱいの花を抱えて。

 お二人はきっと、笑顔で迎えてくださり、わたしを許してくださるだろう。
 そうして、またどこかの恵みの環で巡り会えたならば、今度こそ。
 お側においていただこう――。

 その日を夢見て、わたしは魔鏡をのぞき見る。
 いまだ花の絶えることのないその場所に、お二人は一緒に眠っている。
 墓標に刻まれた言葉を、わたしは繰り返し繰り返したどる。
 変わらない、敬愛の情をこめて。

 ゼルイークとエルレイン
 ダナーク公爵夫妻
 嵐を越え、しあわせという名の虹を掴んだ二人
 ここに眠る

  
  
 
 
  

本日も晴天なり?

2017年9月
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