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キューピー3分クッキング

カエルの好きな王妃さま

 脚立にのぼったジーニーが、菓子職人渾身の砂糖菓子をケーキの上にそうっとのせる。
「でぇきた」
 満足そうににっこりほほえむと、ジーニーは脚立を掴んで支える夫を振り返った。
「どうですか、殿下」
 八段がさねのケーキのてっぺんには、小さな王冠を戴いた女性と、同じく王冠を戴いたつぶらな瞳のカエルの砂糖菓子人形がのっていた。
 もっと言えば、クリームで作られた薔薇や砂糖漬けの果実で飾られた八段すべてに、緑色の砂糖菓子がひしめいている。
「そうだね」
 オーデットの王太子シラルは、妻のために何とか無難な感想を探した。
 結婚して五年になるジーニーは、無類のカエル好きだ。
 明日、結婚五周年を祝う式典のケーキのてっぺんで、ジーニー人形と並んだ自分がカエルの姿なのにも驚かないし、愛情ゆえだと理解――するようつとめている。
「カエルたちが、とても楽しそうかな。わたしはいいのだけれど、引きつけを起こしそうな方が、招待客の中に若干一名いるかも……」
「エリアルダ王太子妃さまですか? 駄目かなぁ」
「うーん。オルフェリア妃はあなたの趣味をご存じだから、見て見ぬフリをなさってくださると思うけれどね」
 そう言いながら、シラルはカエル嫌いの友人に心で詫びた。
 せめて、その砂糖菓子ののっていないところを切り分けてあげようと思う。
「わたしも、妃殿下には申し訳ないかなぁと思うのですけれど」
 ジーニーは脚立を下りながら言った。地方貴族出身で、子供時代は野原を駆け回っていただけに動きは機敏だ。 
「でも、今年は姫さまが来てくださるから、どうしてもカエルデコレーションにしたかったんです」
「ジーニー。姫はあなたの義姉だよ? もう『姫さま』はおかしいでしょう?」
 かつて王女エルレインの侍女をしていたジーニーは、指摘されてそれに気づいた。  
「あ。でも殿下も『姫』って」
「おっと、そうだね。くせなのかな。わたしにとっては、エルレインは『義姉上』って感じじゃないからなぁ」
「わたしも。つい、姫さまのお側で過ごした頃が懐かしくて。あっ、また言っちゃった」
 床に降り立ったジーニーが口を押さえる。彼女が姿勢を正すと、シラルより目線が少し上になった。
 出会った頃、十歳の見習い侍女だったジーニーはどちらかと言えば小柄だったのに、いつの間にかシラルは追い越されてしまっていた。
 ほんの少しだけどね、とシラルは内心注釈をつけてみたりする。こちらは期待したほど背が伸びなかったことを、ちょっとだけ残念に思っているからだ。
「そういえば、あの頃はわたしが女装して姫のそっくりさんになったりしたよね」
 飾りつけの済んだケーキを菓子職人にあずけ、調理場を離れながらシラルは言った。
「そうそう。姫さま、卒倒しそうでしたよね。そのドレス、国費で作ったんじゃありませんよね? なんて仰って」
 思い出したジーニーが手を叩く。
「アレクセル殿下も、はしゃいでらしたなぁ。当時はまだ姫の婚約者だったから、わたしたちを左右に侍らせて『このブタ野郎』と言わせたり」
「してましたねぇ」
「あれから、十年以上になるんだ」
 シラルは懐かしく思いを馳せた。
 あの頃が、誰もが一番気ままでいられた時代だった。今ほど重い責務につく者もおらず、悲しい決断を迫られる者もいず。
 エリアルダとダキニアが戦争をするなど、想像もしなかった。
 魔王が交代し、魔法とヒトとの関わりが新たな時代を迎えることも。
「? ジーニー?」
 シラルはふと、ジーニーが涙ぐんでいるのに気づいた。目元が真っ赤になっている。
「思い出しちゃったんです。姫さまが、あのあとどれほどつらい思いをしたか」
 エルレインは異界とエリアルダのため、最愛の男性を魔王にした。
 そして、たっての願いを叶えるため、彼が長い眠りに就くことを許したのだ。
 ジーニーとシラルは、その様子をつぶさに目にしてきている。
「えへへ。すみません」
 ジーニーが照れ隠しのように笑って、両手で目をこすった。
「まだ、これからですよね。姫さま、しあわせになれますよね?」
「もちろん、なるよ。だって閣下が戻ってきたのだから」
 ――去年の夏、奇跡が起きた。
『ただの人になるために』自らの命を賭けたゼルイークが、その眠りから目を醒ましたのだ。
 十年間祈り続けたエルレインの想いは、天に届いた。
 彼女は今、夫となったゼルイークとともに、領地のダナークで暮らしている。
「お二人に会うのは、一年ぶりだね」
 昨秋、彼らの結婚式に出席して以来だ。
「薬師に、悪酔い防止の薬を調合してもらっておいた方がいいかもしれないな」
「お二人にのろけられて、当てられちゃうからですか?」
「だって、そんな気がしないかい? 姫と閣下は、十年分を一思いに埋めようとしている最中なんだから」
「ふふっ」
 想像したのかジーニーが笑った。そっとシラルに寄り添う。
「わたしたちのお祝いなのに、そっちのけだったら困っちゃいますね」
「まったくだよ」
 応じながら、困ってもいいとシラルは思っていた。ジーニーもきっと同じだ。
 長く耐えてきた分、エルレインにはしあわせになってほしい。
 ようやく自分の人生を手に入れたゼルイークと共に。
「早く、明日になるといいですね」
 ジーニーが言った。
「お二人に会いたい?」
 訊ねるとうなずきが返った。シラルは王城の窓の向こう、煌めくサヴィラ湖を眺めながら、妻の肩を抱いた。
「そうだねジーニー。わたしもだよ」

本日も晴天なり?

2017年9月
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  • ザ・藤川家族カンパニー
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  • 振り返れば先生(ヤツ)がいるシリーズ(全2冊)
    振り返れば先生がいる/振り返れば先生がいる2ndシーズン
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  • 人は影のみた夢シリーズ(全4冊)
    人は影のみた夢①~④
  • 華(はな)は藤夜叉シリーズ(全2冊)
    華は藤夜叉/PURE GOLD
  • アル-ナグクルーンの刻印シリーズ(5冊)
    クィンティーザの隻翼(かたはね)/エズモーゼの左手/星は踊る/ 月を狩る森/砕けた紋章
  • この雪に願えるならば
  • 雨の音洲(あめのおとしま)秘聞シリーズ(全3冊)
    闇燈籠(やみどうろう)心中 桜の章、吹雪の章/ 朧月鬼夜(おぼろづきよ)抄
  • 月虹(げっこう)のラーナ
  • 羽硝子(ハネガラス)の森
  • 睡蓮の記憶
  • カウス=ルー大陸史・空の牙シリーズ(全17冊)
    誘いの刻(とき)/太陽のエセラ/ 祭りの灯(ひ)/嵐が姫《幽幻(ゆうげん)篇》《風雷篇》/忘我の焔/今日命(きょうめい)の螺旋/かさねの鉢植/女神の輪郭(前編・後編)/影朧(かげろう)の庭/聖女の卵/夢眩(むげん)の鏡/華烙(からく)の群れ/蘭の血脈《天青(てんじょう)篇》《地猩(ちじょう)篇》《紫浄(しじょう)篇》

ビーズログ文庫既刊

  • 少年ユヅルの優雅で怠惰な王国
  • 神抱く凪の姫シリーズ(全3冊)
    キレ神様、お目覚めにございます/耐えてください、キレ神様/誓いの刻です、キレ神様
  • 姫さま、恋愛禁止です!シリーズ(全2冊)
    花婿はお馬の王子/旦那さまと呪いのウサ耳
  • 女神の娘の恋歌(こいうた)シリーズ(全3冊)
    暁は伯爵、黄昏は魔王/光の乙女、闇の聖女/一瞬の光、永遠の輝き

幻狼ファンタジアノベルス既刊

  • 半魂香―まどろみの巫女と〈守護者〉―〈上〉〈下〉